圧倒的な個性にスタッフ釘付け
いつものように海外のマネジャーとあれこれと打合せをしていた時、最近の若手指揮者についての話になった。先ごろシカゴ交響楽団次期音楽監督の就任が発表されたマケラの活躍は、ヨーロッパの音楽関係者の間でも、別格の勢いと認識されているのだが、同時にそこで聞いたのがマトヴィエンコの名前だった。
ドミトリ-・マトヴィエンコ ⒸAgnete Schlichtkrull
現在マトヴィエンコ氏が所属する事務所のベテランマネジャーが、2021年のマルコ・コンクールを聴きに行っていた。その1次予選でマトヴィエンコの指揮を見て(聴いて)、即座に「このコンクールに彼が勝とうが勝たまいが、私は彼をうちの事務所に迎える」と即決したのだという。
すぐにそのコンクールの演奏を見たところ、ものの数秒でスタッフ一同心を鷲掴みにされてしまった。音楽への入れ込み方、集中力、そして何なんだろうこの圧倒的かつ独特な個性は!と。
2021年ニコライ・マルコ国際コンクールセミファイナルでの演奏《ストラヴィンスキー:火の鳥》
これはもう絶対に招聘しなければと即オファーし、いよいよこの6月に実現する。このわずか一年足らずの間にマトヴィエンコの活躍は破竹の勢い。今やヨーロッパの音楽界のみならず、日本の音楽関係者の間でも今期大注目だ。
今回の3作品はどれもファンタジーな、物語のある作品が揃った。現実から離れた世界から今の私たちの世界を語ろうとするのか……マトヴィエンコの個性溢れるプログラムは東京では1回のみ。新時代を揺るがす新たな指揮者誕生の瞬間をお見逃しなく!
(企画制作担当/高瀬緑)
ベラルーシ出身。2021年、世界的に権威あるデンマーク・ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで第1位と聴衆賞を受賞。ロジェストヴェンスキー等のマスタークラスやロシアナショナル管指揮者プログラムに参加。ユロフスキ、V.ペトレンコ等のアシスタントを務めた。欧米各地のオーケストラへ次々と客演のほか、2023年5月には、ローマ歌劇場でイタリアでのオペラ・デビューを果たし、ヤナーチェク「死者の家から」のイタリア初演を成功に導いた。今回が日本デビューとなる。
ストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》でピアノソロを務めるのは、新進気鋭のピアニスト高橋優介。東京交響楽団とは2018年にも同曲のピアノソロを務めており、以来、当団のオケ中ピアノを数多く担当している。
高橋優介
「ピアノ奏者としてこの曲を演奏できる一番の喜びは、ソリストとしてではなくオーケストラの中の1人になれるところだと思います。それは協奏曲のような演奏者の技術を魅せる為の技巧的なものではなく、元から色彩豊かなオーケストラにさらにもう一段階色彩を増すための必要不可欠な音数に感じます。第2場のペトルーシュカの部屋の場面は、ピアノという、一度出した音が良くも悪くも減衰してしまう楽器の特徴が良く作用していて、ピアノならではの場面です。
様々なチャレンジを重ね、常に進化し続ける東京交響楽団さんの、僕が魅力に思うところは、奏者全員の圧倒的な演奏力です。凄まじいプレイヤーが集まった東響の音色、歌、そして繊細さと心の奥底まで突き刺す迫力はとても大きな刺激になっています。「ペトルーシュカ」はピアノだけでなくオーケストラの各楽器全員が大活躍します。是非全ての奏者に注目して聴いていただきたいです。」
第10回東京音楽コンクールピアノ部門第1位及び聴衆賞受賞。東京文化会館モーニングコンサート、NHKベストオブクラシックをはじめ、多数のコンサートに出演。ピアニスト・作編曲家の山中惇史氏と、二台ピアノユニット『176(un sept six)』を組む。2020年にカワイ出版社より、山中氏と共作で編曲した、レスピーギ作曲のローマ三部作の二台ピアノ版の楽譜が出版されている。現在桐朋学園大学院大学在学。
2024年6月15日(土)18:00開演(17:30開場)
サントリーホール
指揮=ドミトリー・マトヴィエンコ
ラヴェル:道化師の朝の歌(管弦楽版)―鏡より
ラヴェル:組曲「マ・メール・ロワ」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」(1947年版)(ピアノ:高橋優介)