蘇る現代の「魔笛」
アダムズ&セラーズコンビの最新オペラ
「A FLOWERING TREE 花咲く木」
モーツァルト生誕250年を記念して、2006年に制作されたアダムズとセラーズによる第4作目の共同制作となる最新オペラ「フラワリング・ツリー* 花咲く木」。初演は2006年11月にニュー・クラウン・ホープ音楽祭(ウィーン)で、セミ・ステージ初演は同年12月にサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルにより行なわれました。
南インドの昔話をもとに、貧しい娘と、王子をめぐり展開する愛と変容、そして試練をテーマに、モーツァルトの「魔笛」に想を得て構成された物語です。語り部、娘クムダ、王子の3役の歌手にインドネシア舞踊の踊り手3人が常に寄り添い、その心理を表現する多層的な構造の舞台は、アダムズとセラーズのコンビによる真骨頂といえます。2003年「エル・ニーニョ」で大きな成果を上げた当楽団が、再びセラーズの演出協力を得て、大友直人の指揮、初演を務めた歌手2人を招聘して日本初演に挑みます。
J.アダムズ
P.セラーズ
第562回 定期演奏会
2008年12月6日(土) 6:00p.m. サントリーホール
ジョン・アダムズ:フラワリング・ツリー * 花咲く木
(全2幕、日本初演、セミ・ステージ形式、英語上演、字幕付)
指揮=大友直人
演出=ピーター・セラーズ
クムダ=ジェシカ・リヴェラ(ソプラノ)
王子=ラッセル・トーマス(テノール)
語り部=ジョナサン・レマル(バス・バリトン)
舞踊=ルシニ・シディ、エコ・スプリヤント、
舞踊=アストリ・クスマ・ワルダニ
合唱=東響コーラス
合唱指揮=有村祐輔
2008年10月13日マンハッタンにて
インタビュアー:渡辺 和(音楽ジャーナリスト)
あらすじ
インドのある町に貧しい二人の娘と年老いた母が住んでいた。ある日、美しい妹クムダが、自身の持つ不思議な力で花が咲く木に姿を変え、姉がその花輪を売ってお金を得ることを思いつく。
ある日、クムダが"花咲く木"に変わるのを、王子が見ていて妻にしたいと見初める。まもなく王子とクムダは結婚し、王子は目の前でクムダが花の木に変身するところを見て喜ぶが、二人の生活は愛のないものであった。ある日、王子の姉はクムダの美しさに嫉妬し、クムダを王宮裏で木に変身させ、枝を折って置き去りにしてしまう。人の姿に戻れず苦しむクムダと妻を失い、悲しみにくれる王子。長い時が過ぎたある日、クムダの歌声を聞いた王子は妻を見つけて救い出し、人の姿に戻す。王子はそれまでの自分を改め、二人はその後、愛に満ちた幸せな生活をおくった。
「フラワリング・ツリー*花咲く木」
~オペラを彩るダンサー達
「フラワリング・ツリー*花咲く木」では3人のダンサーによる舞踊も、このオペラの見どころの一つ。 語り部、主役クムダ、王子の3人の歌手にはつねにこのインドネシア舞踊の3人が寄り添います。57年もの経歴を誇るルシニ・シディ、マドンナのツアーにも出演するエコ・スプリヤント、世界中の舞踊シーンで活躍するアストリ・クスマ・ワルダニ。その鍛え抜かれた身体による巧みな心理表現にもご注目ください。
<プロフィール>
■ルシニ・シディ [舞踊]
Rusini Sidi, Dancer and choreography
舞踊家および振付師として、57年の経歴を誇る。1976年からはインドネシア・スラカルタの芸術学校の教員としてジャワ舞踊を教え、1980年よりスラカルタのマンクヌガ ラン王宮およびカスナナン王宮に講師および舞踊家として仕えた。ヨーロッパ、アジア、アメリカなど、世界各地で活躍している。オペラ《フラワリング・ツリー》で初演から舞踊と振付を担当している。
■エコ・スプリヤント [舞踊]
Eko Supriyanto, Dancer and choreography
インドネシア国立芸術大学スラカルタ校を卒業し、同校に所属。幼いころからジャワ舞踊を学ぶ。インドネシアをはじめ、アメリカ、アジア、ヨーロッパでその活躍ぶりは広く知られており、2001年にはマドンナの「Drowned World」ツアーに出演したほか、舞踊コンサルタントとして、ブロードウェーのミュージカル「ライオンキング」のアメリカツアーに関わる。オペラ《フラワリング・ツリー》で初演から舞踊と振付を担当している。
■アストリ・クスマ・ワルダニ [舞踊]
Astri Kusuma Wardani, Dancer and choreography
最も才能のあるジャワ舞踊家の一人。幼いころからジャワ舞踊を学んだほか、即興ダンスや、振付を学ぶ。インドネシア各地で芸術祭やダンス・フェスティバルに出演するかたわら、2006年には大阪や岡山での公演に出演。オペラ《フラワリング・ツリー》では舞踊と振付を担当し、ウィーン初演からベルリン、ロンドン、サンフラン シスコ公演に参加。2009年には、ロサンゼルス、ニューヨークでの公演に出演を予定している。
プログラム連載より
■第4回 ジョン・アダムズは斯く語りき
渡辺和(音楽ジャーナリスト)
演奏会プログラム「Symphony」2008年12月号より
■第3回 花咲く木
山下博司(東北大学・環境思想学者)
岡光信子(文化人類学者)
演奏会プログラム「Symphony」2008年11月号より
■第2回 オペラという"神話"を描く演出家ピーター・セラーズ
前島秀国(サウンド&ヴィジュアルライター)
演奏会プログラム「Symphony」2008年10月号より
■第1回 アダムズ&セラーズ、鬼才が蘇えらせる現代の「魔笛」
岡部真一郎(音楽学者)
演奏会プログラム「Symphony」2008年9月号より