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「メサジェスキス」と東響の7人~東響チェロ・セクション座談会~|11/17 東京オペラシティシリーズ第136回

チェロセクション



 11月、音楽監督ジョナサン・ノットの指揮で、5人の作曲家が並ぶユニークなプログラムが用意されている。特に、20世紀~現代を代表する作曲家の一人で、名指揮者としても活躍したピエール・ブーレーズの「メサジェスキス ~独奏チェロと6つのチェロのための~」は注目の1曲。大変な難曲に挑むことへの思いや、チェロ・セクションの雰囲気などについて、本作に出演する7人に座談会形式で語ってもらった。(林昌英/音楽ライター)


 



-ブーレーズの「メサジェスキス」をやることになったと知ったとき、どう思われましたか?



伊藤

伊藤文嗣(ソロ首席)



伊藤文嗣(ソロ首席奏者):ノット監督がこの曲をやりたいと提案している、と聞いたときにはチェロ団員がちょうど7人で(いまは客演首席奏者の笹沼樹君が加わっています)、優秀な若手奏者も入っているし、難しいだろうけどいまのチェロ・セクションならできる、いいタイミングだと思いました。ノット監督はブーレーズが設立したアンサンブル・アンテルコンタンポランの元音楽監督(2000年~2003年)ですし、光栄なことです。



樋口泰世:私が最初に話を聞いたのは、事務局長の辻さんからです。とある日に「メサジェスキスって知ってる?」と聞かれて、曲は全然知らなかったけど、チェロ・アンサンブルということで、二つ返事で「やります!」と。後で聴いてみて「これはまずいぞ…」と思ったわけですが(笑)。ノットさんが一緒にやりたいと考えてくれたことが嬉しくて、なんとか形にしたいなと思っています。



内山

内山剛博



内山剛博:最初は「今度ノット監督の指揮でチェロ・アンサンブルをやる」という話だけ聞いたんですが、ノット監督が選ぶならもしかしてメサジェスキスかも…と思ったら本当にこの曲で。もう衝撃的でした(笑)。



蟹江慶行:曲の存在は知っていましたが、ノット監督らしい選択だなと思いましたし、彼が振るのを想像するだけでも楽しみになります。



謝名元 民:僕自身はチェロ・アンサンブルが好きなので、ぜひやりたいとノットさんが言っていると聞いて、じゃあやろうじゃないかと。たしかに難しいんですが(笑)、今回は死ぬ気でがんばろうかなと。



福﨑茉莉子:私は曲を全く知らなかったのですが、第一印象はかっこいいしメリハリもあって、スッと入ってくる感じもあり、みんなで弾きたいという気持ちになれました。



川井

川井真由美



川井真由美:留学時代の師匠、ウェン=シン・ヤン先生に「メサジェスキス」をやることになったと話したら、「とっても難しい曲で、一日一小節ずつ練習しなきゃだめだよ、ハハハ」と(笑)。



 



-すでに何回もセクションで合わせをしているそうですね。音を出してみていかがでしたか?



合わせ

7月から合わせをはじめていたチェロ・セクション



伊藤(ソロ):合わせはメンバーで自主的に始めています。最初に思ったよりはできそうだな、という感覚もあります。ただ、アクセントが不規則に来る箇所などは、やはり指揮者がいる方が自分たちができることが増えるとも感じました。ソロパートは弾きっぱなしで、感覚としては息継ぎなしで全速力を続けて、迷ったら終わり。一気に駆け抜けていくような感じです。ランダムのように見える音列が並ぶ曲ですが、その意味や隠された規則性といったことを丁寧に拾いながら、ただの音の羅列にならないように弾くことが必要と考えています。



福﨑(第1):この曲では第1チェロがリーダーという役割にはなりません。スコアを見ると図形として、人数が多かったところからきれいに消えて行ったり、また増えていったり、いきなりユニゾンで集まったりというのがわかります。



内山(第2):合わせをしてみて、7人でひとつの集合体として“うねり”のようなものを作っていくのが、聴きどころになるのかなと。それぞれ担当する音はあるけれど、うねりの中に入っていくみたいな気持ちで取り組んでいます。



蟹江

蟹江慶行



蟹江(第3):ソロは別として、要所ごとに3対3というグルーピングができると考えています。第3は下のラインを担当して、最低音を弾く場面が多い。ベースのパートを弾くのが好きなので喜んでいましたが、高い音もたくさんあってやはり大変です(笑)。



樋口

樋口泰世



樋口(第4):6人のパートの分け方は、スコアを見て相談した結果、まずフォアシュピーラーの川井さんのパートを最初に決めて、あとはじゃんけんで決めていきました(笑)。私はじゃんけんに負けましたが、残り物には福があるということで前向きに取り組んでいます!



謝名元(第5):最年長の僕には、皆さんが選択権を譲ってくれて、じゃあ第5チェロを、と選ばせてもらいました。このメンバーで、しかもノット監督の指揮で、チェロ・アンサンブルができるのがとにかく嬉しいです。



川井(第6):この曲は1番が高音とか6番が支えるといったことはなくて、本当に同等です。弾きっぱなしのソロにかみ合わせていくことが想像以上に難しく、正確にできるよう、メトロノームとお友達にならないといけないなと思って臨んでいます(笑)。この曲でしっかり演奏できたら、セクションとして一段階レベルアップできると確信しています。



伊藤:全員にとってこの曲はチャレンジですが、セクションの絆が深まりそうです。とにかく“デイリー・ブーレーズ”じゃないけど(笑)、毎日さらわないと!



 



-東響チェロ・セクションは、こうして集まっても笑いが絶えず、良い雰囲気ですね。



謝名元

謝名元 民



謝名元:僕が入団した頃からだんだん変わってきて、いまの雰囲気は最高ですよ。



樋口:その変化は“JANAさん(謝名元さんの愛称)”が第一人者として作り上げてくださったものなんです。



伊藤:演奏後の握手を始めたのも、JANAさんからなんですよね。



握手

演奏会終了後の様子。今では多くの楽員がお互いの演奏を称え合い握手している。ⒸT.Tairadate/TSO



蟹江:東響に入団したら、みんな和気あいあいとやっていて、これがオケというものなんだと嬉しかったんですが、他の音楽仲間にはそういうオケは珍しいと言われます。



樋口:若いメンバーも入ってきて距離感も縮まって、他のオケ以上の絆があるセクションじゃないかな。



福﨑

福﨑茉莉子



福﨑:もともとは伊藤さんのソロを聴いてファンになり、ついていきたいと思ったのが最初でした(全員拍手)。それで東響に入ることができたんですが、フランクな感じが心地よくて、ずっとここにいたいという気持ちになりました。



内山:僕は昨年の入団で2年目ですけど、オケは厳格でピリピリした場所というイメージがありましたが、東響全体がとにかく和やかな雰囲気で、かつチェロ・セクションはさらに柔らかい感じに包まれて、その中でいいパフォーマンスにつながる環境を作り上げる、いいセクションです。



川井:入団当初は緊張感もありましたが、JANAさんが良い雰囲気を作ってくれたことでどんどん変わってきて、優秀な若い奏者たちも入り、いまは本当にいい環境で仕事ができているなと。ただ仲がいいだけじゃなくて、みんなでいいものを目指すという気持ちも伊藤君が作ってくれています。



 



チラシチラシ



東京オペラシティシリーズ 第136回

2023年11月17日(金)19:00開演(18:15開場)

オペラシティコンサートホール



名曲全集 第193回

2023年11月18日(土)14:00開演(13:15開場)

ミューザ川崎シンフォニーホール



指揮=ジョナサン・ノット

ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

チェロ:伊藤文嗣(東響ソロ首席奏者)



リゲティ:アパリシオン 

ドビュッシー:3つの夜想曲より 「祭」

ブーレーズ:メサジェスキス ~独奏チェロと6つのチェロのための~

アマン:グラット

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」



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