東京交響楽団

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ソプラノ歌手 安川みくの“横顔”

マエストロとの出会いと《シェエラザード》



安川みく(ソプラノ)



© Ash Mills

2022年4月ソールズベリーにてHurn Court Opera、ドニゼッティ《ドン・パスクァーレ》/©Ash Mills,2022



ジョナサン・ノットさんとの出会いは、2020年の秋。以前、イギリスで開催されたマスタークラスに参加させていただいたご縁から、マエストロに直接声を聴いて頂けることとなりました。



ご多忙の中、お時間をご調整いただき、マエストロのご自宅にて声を聴いていただくことになりました。東京交響楽団さんの演奏会には数えきれないほど通っておりましたが、マエストロと直接お話できるのは初めてで、とても緊張していました。そんな私を、マエストロはフレンドリーに出迎えてくださりました。



道中が長く喉が寝てしまっていたため「少しエクササイズ(声出し)をして良いですか?」とお尋ねすると、「もちろん!」と快諾してくださり、3分ほどアルペジオやスタッカートで簡単なエクササイズをしました。「歌う準備ができました」と申し上げましたら、声をとても褒めて下さり、「もう君は演奏のopportunity(機会)をゲットしたね!(エクササイズのみで素晴らしさがわかったよ!)」と、ジョークを言ってくださったので、一気に緊張がほぐれたのを覚えています。



オペラアリア、歌曲、宗教曲と、ジャンルの異なる5曲を続けて聴いていただいた後、今後勉強を重ねていく上での丁寧なアドバイスをいただきました。その日から、そのお言葉をいつも胸に音楽に取り組んでいます。



また「自分は日本で毎年第九を振っているのだけど、君の声は第九にぴったりだと思う」とも仰ってくださりました。勿論、第九は大好きな作品であることもお伝えしました。



 



© Ash Mills

2022年4月、ロンドン「Friends for Ukraine」での、モーツァルト《ラウダーテ・ドミヌム》。© Grace van Holle, 2022



 



今回取り上げる《シェエラザード》は、その詩の難解さと美しさから、特別な作品だと思っています。



第一曲〈Asie/アジア〉は、未知なるアジアの国々に対する憧れ、興味、抑えられない好奇心を語っています。まだ見ぬ異国の物、人、見たことないものに対する憧れと”怖いもの見たさ”すら覚える感情は、私がイギリスに来た時にまさに抱いたそれでした。第二曲〈La Flûte enchantée/魔法の笛〉ではタイトルにあるフルートの音色が生き物のように舞い、声と絡み合うことで絶妙にミステリアスな雰囲気となるところが聴きどころです。第三曲〈L’indifférent/つれない人〉は、どこか、もやがかかっているような気怠さが、美しく表現されていると思います。



昔から、私自身が異国情緒なものにすごく惹かれるところがあり、トルコランプ、ダマスク模様などを見るだけでもわくわくします。物語を語るオーケストラの細やかな描写は、スコアを眺めるだけでも面白いのです。今回、この作品にどっぷりと浸かり、東京交響楽団さんとマエストロ・ジョナサン・ノットと、大航海をご一緒できることが楽しみでなりません。



 



安川



安川みく Miku Yasukawa, Soprano



 徳島県出身。国立音楽大学卒業後、東京藝術大学大学院修士課程修了。修了時に武藤舞奨学金を賞与。スカラシップでウィーンとロンドンに短期留学。大学院在学中に藝大合唱定期演奏会でJ.S. バッハ《ミサ曲ロ短調》ソプラノソロを務める。

 2019年より拠点をイギリスと日本とし、両国にてヴィヴァルディ《グロリア》、ペルゴレージ《スターバト・マーテル》、ベートーヴェン《第九》、《合唱幻想曲》、ヘンデル《メサイア》、J.S. バッハ《マタイ受難曲》、《ミサ曲ロ短調》、モーツァルト《レクイエム》、ヴォーン・ウィリアムズ《音楽のセレナード》等、宗教曲と歌曲のソリストとして多くの舞台に出演。また2020年H. Hadisi《The Rose Garden – 101 Contemporary Persian Songs》の初演でソプラノソロを務めた。(ペルシア音楽協会主催)

 2020年、英国ロイヤルオペラハウスJPYAP芸術監督より推薦を受けロンドン・ヘンデル・フェスティヴァルに参加。

オペラでは2022年Hurn Court Opera《ドン・パスクワーレ》ノリーナ役でイギリス南部クライストチャーチ及びソールズベリーにてデビュー。同年に刊行されたOpera Now Magazineでは五つ星で評価され、その歌声、演技共に大絶賛を得た。同年夏には英国ロイヤル・オペラ・ハウスにて日本歌曲を演奏。

 これまでにChristoph Prégardien、David Gowland、Emma Kirkbyのマスタークラス受講。英国ギルドホール音楽院アーティストディプロマコースに特待生として合格。現在同コース1年に在籍。2020年よりバッハ・コレギウム ・ジャパンの公演に参加。よんでん文化振興財団奨学生。令和四年度文化庁新進芸術家海外研修員。



 



S704m180



第704回 定期演奏会

2022年10月15日(土)18:00開演(17:15開場)

サントリーホール



名曲全集 第180回

2022年10月16日(日)14:00開演(13:15開場)

ミューザ川崎シンフォニーホール



指揮:ジョナサン・ノット

ソプラノ:安川みく



ラヴェル:道化師の朝の歌(管弦楽版)-鏡より

ラヴェル:歌曲集「シェエラザード」

ショスタコーヴィチ:交響曲 第4番 ハ短調 op.43



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