1999年、サイモン・ラトルがクラウディオ・アバドの後を引継ぐ形でベルリン・フィルの首席指揮者に就任するというニュースが流れ、世界を揺るがす一大センセーションを巻き起こした。このセンセーショナルな話題と共に、当時クラシック音楽業界で、もう一つの大きな話題となっていたのが、ラトルによって驚異的な発展を果たしたバーミンガム市交響楽団の首席指揮者の後任人事だった。
どんな巨匠が来るのか、はたまたどの新進気鋭指揮者が来るのか、飛び交う様々な憶測の果てに発表されたのが、今回東京交響楽団を指揮するサカリ・オラモだった。当時は日本では全く無名ながら、やはりラトルの後任として選ばれたには、それなりの訳があり、それはこの新任シェフとの演奏会やレコーディングによって証明されることとなった。
サカリ・オラモ©Benjamin Ealovega
素朴で朴訥としながら、繊細な美感を失わず、インターナショナルでありながら、どこか北欧の澄んだ空気を連想させる音楽は、聴衆の心に深く染み渡るものだった。元々フィンランド放送交響楽団のコンサートマスターを務めるほどのヴァイオリンの名手であることからも、オーケストラの気持ちが分かるのか、はったりや強制的なことが一切ない。無理なこと、不自然なこと、これ見よがしなことは全く行わず、ナチュラルでありながら、聴衆の心の琴線に触れる音楽は、非常に心地良く耳に届く。(ちなみにサカリ・オラモの後任は、若くして巨匠の域に達していると言われるアンドリス・ネルソンス!)
バーミンガム市交響楽団を退任した後も、フィンランド放送交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団(ニューヨーク・フィルへ行ったアラン・ギルバートの後任!)、BBC交響楽団と言った世界的なオーケストラのシェフを歴任した。
これらのオーケストラとの様々な演奏会やレコーディングによって残されたサカリ・オラモの軌跡からも、その実力が伺える。サカリ・オラモの持つ虚飾の無い澄んだ空気を思わせる音楽が、4月の日本の春の空気とマッチして、心和む演奏会となることに大きな期待を寄せたいと思う。
東京交響楽団 事務局長 辻 敏
インタビューを受けるサカリ・オラモ(イギリス&アイルランド・フィンランド協会のYouTubeより/Video by Sara Forsius and Virva Viljanen)
●第719回 定期演奏会
2024年4月20日(土)18:00開演(17:30開場)
サントリーホール
●川崎定期演奏会 第94回
2024年4月21日(日)14:00開演(13:30開場)
ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮=サカリ・オラモ
ソプラノ=アヌ・コムシ
ラウタヴァーラ: カントゥス・アルクティクス (鳥とオーケストラのための協奏曲)
サーリアホ:サーリコスキ歌曲集(管弦楽版)<日本初演>
シベリウス:交響詩「ルオンノタル」
ドヴォルザーク:交響曲 第8番
[4/20]チケット購入 公演詳細
[4/21]チケット購入 公演詳細