2024年度《シーズン11》が間もなく開幕。シーズンオープニングを飾るのは名匠サカリ・オラモ。BBC交響楽団首席指揮者、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団桂冠指揮者、フィンランド放送交響楽団の名誉指揮者を務めるフィンランドを代表する指揮者がいよいよ東響初登場です。
あれは何年前でしょうか、少なくとも15年以上前、事務局長からその名前を聞き、初めて指揮映像を見たとき。もう感覚的に「あぁぜひ呼びたい!」と。以来、ずっと招聘の機会を探っていましたが、今回ついに、満を持しての登場となりました。
サカリ・オラモ©Benjamin Ealovega
東京交響楽団とは初共演。まさにマエストロならではのプログラムです。
1曲目の《ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス (鳥とオーケストラのための協奏曲) 》は、その副題のとおり、テープに録音された鳥の声とオーケストラの協奏曲。3つの楽章で異なる鳥のさえずりがオーケストラと対話するかのような作品です。日本での演奏は、2018年、アンサンブル金沢が取り上げて以来です。
驚いたのは、その“鳥の声”はラウタヴァーラがフィンランド北部の湿地で自ら録音し編集したものだということ!しかもほとんど音響処理をされていない、つまりほぼほぼ自然の鳴き声そのままというのです。
先日、ミューザ川崎シンフォニーホールで鳥の声のサウンドチェックを行いました。空間が一気に大自然に包まれ、まるで自分が湿原にいて、鳥が佇み羽ばたく様子を眺めているような感覚に。終楽章では、ラウタヴァーラが「白鳥の大群が燃える太陽に向かって真っすぐに飛んでいく様子を想像した」と語ったとおり、まさに圧巻。コンサートホールで聴く“没入感”は半端ありません!鳥の声の“オペレーター”は私たちをどこに導くのか……ご注目ください。
(参考)ラウタヴァーラ:カントゥス・アルクティクス(ミッコ・フランク指揮/フランス放送響)
2曲目は、昨年亡くなったカイヤ・サーリアホの《サーリコスキ歌曲集》。日本初演です。フィンランドの詩人サーリコスキの詩に魅せられた今回のソプラノ、アヌ・コムシ氏自らサーリアホに作曲を提案した作品で、こちらも自然をテーマにした作品です。
アヌ・コムシ ©Ville Paasimaa
ネルソンス指揮ボストン響で2022年2月に世界初演した際も、アヌ・コムシがソリストを務めました。「完璧だ」「非凡なソプラノ」「幅広い音域を誇るその声を自在に操り、見事な歌唱だった」「彼女の声は時にピッコロを、時にはトランペットやヴァイオリンを思わせる」と絶賛されています。
(参考)サーリアホ:サーリコスキ歌曲集(サカリ・オラモ指揮/アヌ・コムシ独唱/フィンランド放送響)
さらにコムシは3曲目のシベリウス《ルオンノタル》も歌います。演奏時間は約10分と短いながらも、超絶技巧と力強い声が必要とされるため、極めて演奏機会が少ない作品です。「ルオンノタル」とは“大自然の精”を意味しますが、演奏会最後を締めくくるドヴォルザークの《交響曲第8番》も、“ボヘミアの田園交響曲”と呼ばれる作品。大自然への讃歌を込めたプログラムに、どうぞご期待ください。
(企画制作担当/高瀬緑)
●第719回 定期演奏会
2024年4月20日(土)18:00開演(17:30開場)
サントリーホール
●川崎定期演奏会 第94回
2024年4月21日(日)14:00開演(13:30開場)
ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮=サカリ・オラモ
ソプラノ=アヌ・コムシ
ラウタヴァーラ: カントゥス・アルクティクス (鳥とオーケストラのための協奏曲)
サーリアホ:サーリコスキ歌曲集(管弦楽版)<日本初演>
シベリウス:交響詩「ルオンノタル」
ドヴォルザーク:交響曲 第8番
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