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音楽監督ジョナサン・ノットが語るプログラミング|5/17東京オペラシティ

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2024.5.15

Operacity

[曲目]
■ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」op.16
休憩(20分)
■酒井健治:ヴィオラ協奏曲「ヒストリア」
■イベール:交響組曲「寄港地」

 

 大のベルリオーズ好きの友人から、「なぜプログラムのメインとなり得る一番大きな曲(つまりベルリオーズ)を最初に置くのか」と聞かれました。理由はいろいろあるのですが、私がお伝えしたいのは「通常、私たちは最も“現代的な曲”を最初に演奏する」ということです。今回のプログラミングもそうしました。

 

 酒井健治氏のヴィオラ協奏曲は、5度の開放弦を多用していて、明らかに古代の音楽をベースとしています。そして、メジャー/マイナーコードを多用している。現代人の視点で、古いものを再訪するような効果があります。現代音楽はしばしば(とくに東京オペラシティは、現代音楽を演奏する最も有名な場所のひとつであり、また現代的な"人生"の"神殿"と言えるでしょう)、私たちに未来のビジョンを示そうとします。彼の作品を体験した人は皆、(日本の)過去との大きなつながりを感じるでしょう。

 コンサート全体は、世界各地の素晴らしい料理を味わうディナーのような“旅する”コンサートになるように組み立てています。イベールの「寄港地」は、色彩豊かで刺激的、絵画的なヨーロッパの様々な主要都市でのくらしを私たちに見せてくれますし、酒井作品は私たちを京都に連れて行ってくれます。

 

イタリアのハロルド
ベルリオーズ「イタリアのハロルド」リハーサルの様子。

 

 ベルリオーズの交響曲「イタリアのハロルド」は全4楽章。ベルリオーズにとって2つめの交響曲で、協奏曲ではありません(1つ目が「幻想交響曲」、3つ目が劇的交響曲「ロメオとジュリエット」)。ハロルドという人物を主人公に(これも本当は我々なのですが)、彼の人生のいくつかの経験を共に旅します。物語は、ハロルドの頭の中で起こっている暗い悪夢のような世界(ショスタコーヴィチの緩徐楽章に非常に似ています)で始まり、私たちは目覚めて主人公(こちらはドン・キホーテに似ています)に会い、彼のすべての感情と欲望、そして人生で経験したいことを見ていくのです。

 第2楽章では巡礼者の行進(宗教)を追い、第3楽章では躍動感あふれるセレナーデ(人間愛)を聴きながら旅をする。これらの出来事を経験しながら、主人公は常に自分の気持ちを語っていきます。

 フィナーレでは、それまでの楽章を再び訪れ(ベートーヴェン第9番のフィナーレの冒頭のように)、ハロルドは問題が解決していないことを語り続けます(これも第九のフィナーレ冒頭のように)。そして私たちは、酔った勢いで破壊の場面に放り込まれる――まさに地獄――。山賊たちはすべての“古い生活様式”を破壊し、最後に私たちは人生の極限と、個であろうとする人間の意志に導かれます。

 

大地の歌
2024年5月12日 第720回定期演奏会 ⒸN.Ikegami/TSO

 

 この曲を指揮するのは初めてですが、私はこの曲の現代性に驚嘆しています。荒々しいベートーヴェンの遺産を受け継ぎ、時代の伝統をすべて破って、さらに“現代的”に仕上げている。この曲の演奏機会が決して多くはないですが、本当に素晴らしく、まったく衝撃的な音楽なのです!このコンサート・プログラムは、私がこれまでに指揮した中で最も「生命力に満ち溢れた」もののひとつです。生命のエネルギーの素晴らしさを感じることができます。そして、先週の「大地の歌」に続くプログラムの、優しくそしてどちらかといえば悲しく人生を振り返り、死を見据える緊張感に対する解毒剤となるでしょう。

音楽監督 ジョナサン・ノット

 

チラシ

東京オペラシティシリーズ 第138回

2024年5月17日(金)19:00開演(18:30開場)
東京オペラシティコンサートホール

指揮=ジョナサン・ノット
ヴィオラ=青木篤子(東響首席)*
ヴィオラ=サオ・スレーズ・ラリヴィエール**

ベルリオーズ:交響曲「イタリアのハロルド」op.16*
酒井健治:ヴィオラ協奏曲「ヒストリア」**
イベール:交響組曲「寄港地」

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